何が引き金となったのかはわからないけど、サイバーの言うおおよそのことを冗談として笑ってきたスマイルでも、譲れない何かはあるのだろう。何の会話をしていたかは忘れたけど、その中の一言でスマイルの周りの空気が少し、固くなった。サイバーはそれに気づくのが、少し、遅すぎて、気づいた時にはフォローできないほど空気は凍りついていた。謝ろうにも何が原因かもわからなくて謝ることもできない。なんとか誤魔化そうと話題を変えて、こないだのギャンブラー見せてよと言うと、君最低だねと笑ってスマイルはどこかに消えていってしまった。
  何だよ!と言うと、後ろからぺしんと頭をたたかれる。誰だって喧嘩の相手にくれてやるものなんてない。
  こうなると頑固なのはスマイルのほうで、やっと、事の重大さに気づいたサイバーがいくら必死になだめようとしたり謝ろうとしても、姿を表してさえくれない。普段一緒になって騒いでいてもストッパーとなるのはむしろスマイルである。そこは伊達に、サイバーの何倍も生きているわけじゃない。けれど、彼だって怒るということを、だからこそサイバーは忘れてしまっていた。
  無神経になっていた自分は確かに最低だと思った。沈黙がやりきれなくて、たぶんまだそこにいるであろうスマイルに、サイバーは必死になって声をかける。



「なあ、ごめんよ。」


「おれが悪かったから。」


「本当にごめんって。」


「なあ。」


  とうとう泣き出してしまいそうな少年を、いくらなんでも黙って見過ごすわけにもいかず、仕方ないねとスマイルは姿を見せた。先ほどの騒ぎようが嘘のようにぽかんとしているサイバーを見て、もうあんな事言うんじゃないよ、言ってスマイルはサイバーのほっぺたをぎゅっとつねった。














スマイルさんは大切な人にしか本気で怒りません。きっと。




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