気が向いたのでKKの髭を剃ってやった。
最後に剃ったのいつ、と聞くと覚えてねえなあと悪びれる様子もなく、頬をぽりぽりとかく。
あんまりにもどうでも良さそうなので、わざわざやってやるんだから感謝しろと言った。
それだって、聞いているのかどうかわからないけれど、とりあえず神は寛大なものと決まっているのでやってやろうかと思う。



手頃な椅子がなかったから寝転がってもらった。
MZDが、持ったカミソリの感触にひやりとしたところを見て、KKが寝そべりながら苦笑する。
ふざけてカミソリの刃を首筋に当てるとKKは手を両手に挙げた。
さっさと挙げたものだから降参も何もない。逆にやられたような気がしてじっとしてろと少し苛立つ。
KKがばかだなと言った。お前ほどじゃない。



慎重に剃刀をざらざらの肌の上にのせる。
途中でいくつか切ってしまったのだが流石に悪いと思ってすぐに治してやった。
失敗をすぐに隠すなんてどこかの小学生のようなことをすると、我ながら思ったのだけど、それ以外に何もできない。
KKだって痛いと言えばいいのに、慣れているのかそれともやってもらっているから文句は言えないとでも思っているのか、 黙っている。痛いのに黙っているなんて、変態、文句ぐらい言えばいいのに。KKがあまりに何も言わないから、自分がさみしくなる。
あんまり姿勢よく寝てるから死体みたいだった。
ホトケさんの最期の散髪をしたり、お顔を整えてあげる仕事というのも需要があるので、 間違って顔切っちゃっても死体は怒らないし、けっこういいかもしれないって話をした。
俺が死んだら頼むわって言われたけど、できればそんなことしたくない。
それでもきっと、いつかは、と思うと鼻の奥がつんとして、KKと同じように黙りこくるしかなかった。



全て剃り終わって熱い蒸しタオルを渡した。
マコトにだって負けねーぜと胸を張るとはいはいと言ってタオルにそのまま顔を埋める。
ちゃんとこっちを見てとさっきあげたばかりなのにKKからタオルをとった。
見てるよと言ったのですっかりすべすべになった顎に指を這わせる。
「お前があんなこと言うから、すっげーさみしいんだよ。」
そう、と言って頭をなでるものだからすっかりしんみりしてしまって、雰囲気に押しつぶされるように頭をKKの胸に預けた。















時々ふと寂しくなったりしてもいいとおもう




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